絵本の家
テラス/螺旋階段/薪ストーブ
新築 千葉県佐倉市
敷地面積
182.05㎡
建築面積
72.14㎡
延床面積
110.44㎡
構造
木造 2F
竣工
2016年8月
構造設計
有限会社エスフォルム
施工
有限会社Beハウス・アクト
撮影
大塚泰子
「暮らしが物語になる家」
『絵本の家』は、四季折々の自然とともに暮らし、家族の物語を紡ぐための住まいです。
郊外の静かな住宅街に建つこの家は、自然素材を用いた経年変化を楽しむ設計と、日本の風土に寄り添う空間づくりが特徴です。庭とアプローチが一体化した空間や、キャンプをするような開放感を味わえる玄関土間は、自然との対話を育み、日々の暮らしを豊かにします。
室内には、家族を優しく包む薪ストーブが設置されています。冬の日には、炎の温かさとぱちぱちと燃える音が家全体に広がり、五感を刺激するぬくもりと癒しを提供します。この家は、自然との調和を感じながら心地よく暮らすための空間です。
『一冊の本棚』という特別な存在
この家の象徴的な要素のひとつが、2階に設けられた「一冊の本棚」です。この本棚は、単なる収納ではなく、親が子どもに伝えたい一つのメッセージを込めてデザインされた特別な空間です。壁一面に用意された本棚の各スペースには、一冊ずつ厳選された本が収められています。その一冊は、親の想いを象徴するメッセージとして壁に彫り込まれたように存在し、まるで絵画のように際立っています。
低い位置には、小さな子どもが手に取れる絵本が収められ、成長とともに高い位置に配置された本へと手を伸ばしていく。これは、親が子どもの未来を思い描きながら、彼らの成長に寄り添う試みです。情報があふれる現代において、たった一冊の本を通じて親が伝えたい物語を子どもに届けるこの仕組みは、単なる収納以上の深い意味を持ちます。
本棚には、時代を超えて受け継がれる価値があり、選ばれた本は家族の歴史や記憶を彩る象徴となります。この「成長を待つ本棚」は、家族の対話を育み、暮らしの中に文化と想いを織り込む特別なデザインです。親が選ぶ一冊は、子どもの成長を支えるだけでなく、家族の絆を深め、次世代に受け継がれるメッセージとなるでしょう。
家事を楽しむ理想的な動線
『絵本の家』では、家事が効率的で楽しくなるよう、動線にも工夫を凝らしています。1階のキッチンはアプローチ土間と直結し、外部と内部をスムーズにつなぐ開放的な空間です。その奥には、奥様がミシンや趣味を楽しめる家事スペースがあり、プライベートなひとときと家族空間がゆるやかにつながっています。また、2階にはバスルームとサニタリールームに隣接した大容量のファミリークローゼットがあり、その奥には洗濯物を干せるベランダを設けました。家事の流れをスムーズにし、負担を軽減することで、日々の生活がさらに快適になります。
1階と2階をつなぐ光をまとった軽快な螺旋階段は、空間全体を心地よくまとめ上げるアクセントです。この階段は、住まいに開放感と一体感をもたらし、上下階を自然につなげます。
暮らしが家族の物語に
『絵本の家』は、自然と共に生き、家族の物語を紡ぐための家です。「一冊の本棚」に込められた親の思いや、効率的で心地よい動線設計、そして日々の暮らしを豊かに彩る薪ストーブや螺旋階段。それらが一体となり、家族の成長とともに家そのものが生きた物語となる住まいです。
何気ない日常が特別な記憶として刻まれる。そんな暮らしが、ここから始まります。